OJTで失敗しないための3つのポイント

「OJTはうちでもやっているけれど、なかなか新人が育たない」
「結局、教える側の負担が大きくなってしまっている」

こんな声を耳にすることは少なくありません。OJT（On the Job Training）は、現場で実務を通して学ぶもっとも実践的な育成法ですが、思ったような成果が出ないことも多いのです。

その原因は「OJTの仕組みそのものが間違っている」わけではなく、日々の関わり方や見落としがちな落とし穴にあることがほとんどです。
今回は、OJTを失敗させないために押さえておきたい 3つのポイント を整理しました。

ポイント① 指導者の“思い込み”に注意

OJTでまず気をつけたいのが、指導者の「自分のやり方を教えれば伝わるはず」という思い込みです。

新人は知識も経験もゼロに近い状態で仕事を始めます。言葉で説明されてもイメージがわかず、何度も同じ質問をしてしまうこともあります。指導する側は「なんで理解できないんだろう？」と焦るかもしれませんが、これは自然なこと。

たとえば、ベテラン社員が「これは基本だから説明しなくてもわかるだろう」と省略してしまうと、新人は要領を得られず、迷いや失敗が増えてしまいます。
逆に「まず見せる」「途中で立ち止まって解説する」といった工夫を取り入れると理解がスムーズになります。

OJT失敗で特によくあるのが「任せる」と「放置」を混同してしまうことです。

「やってみなさい」と仕事を丸ごと渡すのは一見良い育成法に思えます。しかし、確認やフォローがなければ、本人は不安なまま進めるしかなくなり、誤ったやり方が定着してしまう危険があります。

たとえば営業現場なら、「このお客様への提案、やってみて」と任せただけで終わると、本人は「これで合っているのか？」「うまくいかなかったらどうしよう」と強いプレッシャーを抱えます。結果的に萎縮してしまい、成長のチャンスを逃してしまうのです。

大切なのは、任せると同時に 「確認・フィードバックの場」を必ずセットにすること。
「まずは自分なりにやってみて、その後に一緒に振り返ろう」というスタンスであれば、本人は安心して挑戦できますし、失敗しても学びに変えられます。

現場でありがちなのが、「振り返りの時間を取りたいけれど、業務が忙しくて後回し」というケースです。これが積み重なると、OJTは単なる“やらせっぱなし”になってしまいます。

しかし振り返りがなければ、新人は「うまくできたのかどうか」も分からないまま次の仕事に進むことになります。これでは失敗が繰り返され、成長のスピードは大幅に落ちてしまいます。

振り返りは長時間である必要はありません。
「一日の終わりに5分だけ」「週1回10分の1on1」など、小さな習慣で十分です。
「ここは良かった」「次はこうしてみよう」と具体的に伝えるだけで、本人の安心感も前向きさも大きく変わります。

忙しさに流されないためには、振り返りをスケジュールに組み込んで“予定化する” のが効果的です。「時間があればやる」ではなく「必ずやること」として扱うことで、育成の質が安定します。

OJTは、新人が現場で成長するために欠かせない仕組みです。しかし、やり方を間違えると「教えているのに育たない」「結局、指導者も新人も疲弊してしまう」という失敗につながります。

今回紹介した3つのポイントを振り返ってみましょう。

この3つを意識するだけで、OJTは失敗から大きく遠ざかり、成長実感のある学びの場へと変わります。

さらに、OJTを体系的に理解したい方は関連記事「OJTの基本ステップ」もご覧ください。基本の流れと今回の“失敗しない工夫”を組み合わせれば、より効果的な育成法が見えてくるはずです。

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